ミルズメス
ミルズメス(Mills'Mess) †
ボールジャグリングの王様。ミルズメスの解説です。
ミルズメスはまさに3ボールジャグリングの王様というにふさわしい、美しく印象的なパターンです。手が交互に交差され、3つのボールが流れるような曲線を描いて追いかけあいます。その様子はまるでボールに生命がやどったかのようです。このパターンをぜひともジャグリングできるようになりたくて、ジャグリングを始めたという人もたくさんいます。
多くのジャグリングパターンについて言えることですが、ミルズメス自体は実はそれほど難しいパターンではないのですが、その複雑な動きを頭で理解するのには少し時間がかかります。ですからミルズメスの多くの練習はその独特の動作を体に覚えこませることに費やされる事になるでしょう。
ミルズメスの複雑な動きにすっかり頭が混乱してしまい、習得を断念する人も多いようです。しかしすべては練習が解決してくれます。細かい動作に分け、ステップバイステップで練習していけばあるときひらめきのようにパターンの全貌が見えてくる瞬間があります。一旦理解してしまえればその後の習得は驚くほどスムーズに進むでしょう。この最初のひらめきが起こるまでには少し時間がかかるかもしれません。しかしあきらめないで続けてみましょう。ミルズメスはそれだけの努力の価値があるパターンです。行き詰まった時は休憩を取る事も忘れないで下さい。
歴史的背景 †
このトリックはスティーブミルズ(Steve Mills)というアメリカのジャグラーによって考案されました。ミルズはこの技の名前を付ける時に自分の名前の頭文字と韻を踏むようにミルズメス(Mills Mess)としたのです(Mで韻が踏まれています)。このことにならい画期的なジャグリングパターンの名称に考案者の名前にその頭文字で始まる言葉をつけるという形式がすっかり定着しました。バークスバラッジ(Burke's Barrage)、ルーベンスタインズリベンジ(Rubenstein's Revenge)、ダンカンドーナツ(Duncan Donuts)などという技の名称はすべてこの形式に従っています。
ミルズメスの特徴 †
複雑なパターンを分析してみましょう。
ミルズメスは次の6つの動作が繰り返されています。
- 右手を左手の上に交差させて 右手から 右の方向にボールを投げる
- 手の交差を解いて 左手から 右の方向にボールを投げる
- 左手を右手の上に交差させて 右手から 右の方向にボールを投げる
- 左手を右手の上に交差させて 左手から 左の方向にボールを投げる
- 手の交差を解いて 右手から 左の方向にボールを投げる
- 右手を左手の上に交差させて 左手から 左の方向にボールを投げる
想像上のボールを使ってこの6つの動作を実際にやって見てください。ボールを落とす心配はありませんから、上の説明を見ながらゆっくりと手を動かし、(想像上の)ボールを投げてみましょう。
手の動きだけに注目すると腕が交互に交差していることが分かります。これがミルズメス独特のムーブを作り出しています。
右手と左手は交互に同じ高さでボールを投げています。右手で投げられたボールは必ず左手でキャッチされ、左手で投げられたボールは必ず右手でキャッチされます。このことだけ取ってみれば基本的な3ボールカスケードと全く同じであることに気づきます。信じられないかも知れませんが、ミルズメスは手の複雑な動きを取り払えば3ボールカスケードと同じ事をしているに過ぎないのです。
ミルズメスの練習 †
ミルズメスのような複雑なパターンを習得しようとするとき、その方法は大きく分けて2つあります。1つはパターンをいくつかのパートに分解し、個々のムーブを練習した後、全体を組み立てるという方法です。もう1つはミルズメスの動きの元になるより簡単なパターンを練習し、それを徐々に変形させてミルズメスに近づけていく方法です。いろいろなジャグリングパターンはお互いに関連づいているので、この方法はほとんどのジャグリングパターンの習得に有効です。
ここではこの両方のアプローチからミルズメスを習得する方法を紹介してみたいと思います。
ミルズメスの分解 †
2つボールの練習 †
いきなり3つのボールで始めるのは大変ですからまずは2つのボールで基本的な動作を練習してみましょう。ボールを右手と左手に1つずつ持ちます。説明のために右手のボールをA,左手のボールをBと表します。
- まず右手を左手の上に交差させます。これがスタートのポジションです。
- 右手からボールAを投げはじめます。右手の手首の動きでボールAを右の方向に投げます。(このボールは後に左手でキャッチします。)
- 続いて手の交差を解き、左手のボールBを先ほどと同じように右の方向に投げます。
- 次に左手を右手の上に交差させます。左手で最初に投げたボールAをキャッチします。
- この状態のまま右手でボールBをキャッチします。
ここまでが一連の動きです。最後の状態は最初の状態のちょうど左右逆になります。
それができたら今度は手を左右逆にして同じ事をやってみましょう。最終的な目標はこの動作を左右交互に繰り返すことができるようになることです。
3つボールでの練習 †
それではいよいよ3つボールを使った練習です。ここでもいきなりすべてのパターンを完成させるのは無理ですからミルズメスの最初の3投だけを練習してみることにします。先ほどの2つのボールの練習にもう1投追加するだけです。右手にボールを2つ、左手に1つ持ちます。説明のため右手のボールをA,C、左手のボールをBとします。
- 右手を左手の上に交差させます。これがスターティングポジションです。
- 右手からボールAを右の方向に投げます。
- 手の交差を解き、左手からボールBを右の方向に投げます。*
- 左手を右手の上に交差させ、左手でボールAをキャッチします。同時に右手のボールCを左手の下から投げます。**
- ボールCを投げた右手ですぐにボールBをキャッチします。
- 最後に手を交差させたままボールCを左手でキャッチしてパターンをストップさせます。
(*) この投げ方はオーバーザトップという投げ方です。
(**) この投げ方はアンダーザハンドという投げ方です。
これで最初の状態とちょうど左右逆の状態になります。この状態から上と同様の動作を左右逆に繰り返してみましょう。
ここまでの動作を何度も何度も練習しましょう。最初の何回かはどのボールを投げ、どのボールを取ったらいいのか頭が混乱してしまうでしょう。そのときは上に書いた文章と絵を繰り返し見てやることのイメージを頭に叩き込むことです。あきらめず何度も練習すれば徐々に頭の中が整理され、やるべきことがはっきりと分かってくるでしょう。最終的には何も考えなくてもスムーズに一連の動作が行えるようになるはずです。 この動作が20回から30回安定してできることを目指して練習しましょう。
ミルズメスの完成 †
いよいよ実際のミルズメスです。もう最後のステップでパターンを止める必要はありません。6のステップでボールCをキャッチする前に左手のボールAを左方向に投げます。ここからミルズメスの折り返しがスタートします。ステップ1に戻り、左右逆にステップを繰り返せばいいのです。最初は1往復を目標にしましょう。次第に2往復、3往復と続けられる回数を増やしていけば、いつのまにか目の前にミルズメスが完成しているはずです。
カスケードからの移行 †
上ではミルズメスを静止した状態からスタートする方法(コールドスタート)を解説しましたが、カスケードの状態からこのパターンに移行する方法(ホットスタート)も考えましょう。全く難しくはありません。カスケードの状態から左手(または右手)でアンダーザハンド(ボディースロー参照)を1回投げるのです。ここからミルズメスは自然に始められるはずです。
パターンを変形させる †
上の方法がうまくいかない人のためにもう1つのアプローチを紹介しておきましょう。これはミルズメスの元になるより簡単なパターンを練習し、それを変形させる事でミルズメスの動きを理解するという方法で、複雑なジャグリングを習得する重要なアプローチです。
ミルズメスの元になるパターンはウィンドミル(Wind Mill)です。まだこのパターンを練習した事がない方はこの本のウィンドミルの項目を見てそれを練習してみましょう。ウィンドミルの習得はミルズメスに比べてはるかに短期間でできるはずです。ただしウィンドミルは左右が非対称的なパターンですので右手でも左手でも同等にジャグリングできるようにする必要があります。
言ってみればミルズメスはウィンドミルを左右交互に繰り返すパターンです。最初の3投は右側のウィンドミルを行い、次の3投は左側のウィンドミルを行なう、というように3投おきにウィンドミルの方向を逆転させるとそれがミルズメスの動きになります。
ウィンドミルとミルズメスはこのように親密な関係にある2つのパターンです。ですから慣れてくればこの2つのパターンの間を自由に行き来することができるようになるでしょう。例えば右回りのウィンドミルからミルズメスに移行し、しばらく後に左回りのウィンドミルに移行するという具合です。互いに仲のいいパターンを知っておくことはパターンからパターンへのスムーズな移行(トランジッション)を考える時、役に立ちます。
さらに安定させるために †
一通りミルズメスの動きを理解したら、それを何度も繰り返し練習して、全ての動作が滑らかに無駄なく行われるように意識してみましょう。上級者のミルズメスを見ると、これが自分の練習しているパターンと本当に同じ物なのかと見間違うくらいにスムーズな動きをしているでしょう。3つのボールが体の前できれいな8の字型を描きながら、追いかけっこをしているように動きます。上級者のミルズメスをよく観察し、そのイメージをしっかり頭に刻み込みましょう。正しいイメージの元で練習を繰り返すと自然にその動きに近づいていきます。
ミルズメスというパターンほどやる人の個性が表れるパターンも珍しいでしょう。同じパターンでもやり方がすこし違うと全く違った印象を与えることがあります。同じミルズメスでも強調するところをすこし変えてみたり、体の動きを工夫する事でパターンに自分独自の個性を持たせる工夫をしてみても面白いかもしれません。
素晴らしいジャグリングはボールに生命を吹き込みます。もはやあなたがボールを操っているのではなく、ボールが自分の意志であなたの手の間で軽やかにダンスを踊っているかのようです。
ミルズメスの原理 †
ミルズメスは手の複雑な動きを取り払って考えれば3ボールカスケードと同じ動きをしていると解説しました。しかしミルズメスの動きは実を言えばどのようなジャグリングパターンにも応用する事ができます。最初にミルズメスの特徴としてミルズメスを構成している6つの動作をまとめましたが、この6つの動作は3ボールでジャグリングできるどのようなパターンにでも応用する事が可能です。さらに驚くべき事に4ボールファウンテン、5ボールカスケードなどボールの数が増えても、同じようにミルズメスの考え方は適用する事ができます。
ここでは3ボールの例を1つだけ挙げておきます。後は読者の皆さんがご自分で開発してみてください。
W(423) †
以下に紹介するのはWといわれているパターンにミルズメスの手の動きを適用したものです。これはサイトスワップの名称から423ミルズメスと呼ばれています。
このパターンは実はバークスバラッジといわれるパターンを変形したものだと考える事ができます。パターンをよく観察してみてください。
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