ジャグリングのパターンはサイトスワップノーテーションによって数列に置き換える事ができます。では逆に勝手な数列を作ればそれはジャグリングパターンになるのでしょうか。残念ながらその答えはNoです。ではジャグリング可能な数列とはどのようなものなのでしょうか。また与えられた数列がジャグリング可能かを判別するにはどうしたらいいのでしょうか?それについて論じるのがこの項のテーマです。
まずジャグリング可能(英語ではJugglableといいます)であるとはいったいどういうことなのかを考えてみましょう。一般的に考えればジャグリングとはボールをさまざまな投げ方をしながら2つの手の間で受け渡しするものです。そのときジャグリングができなくなるとはどういうことなのかを逆に考えてみればいいでしょう。人間の手はせいぜい1つのボールしかキャッチする事はできません。ですからもし一方の手に2つ以上のボールが同時に落ちてくればそのボールを同時に取る事はできません。どちらか一方のボール(または両方)は必ず落としてしまします。ジャグリングできるためには少なくとも
ということが必要です。この逆はどうでしょう。もし一方の手に2つ以上のボールが落ちてこなければジャグリング可能でしょうか?実際問題そうとは言い切れないかもしれません。例えばボールが空中で衝突するといった問題もあるでしょうし、現実的に到底不可能な高さまでボールを投げるようなパターンは考えても仕方がありません。しかしここではそのような現実的な問題は切り捨てる事にしましょう。上に書いた条件が満たされれば少なくとも理論的にはジャグリングが可能なはずだと考えるのです。ジャグリング可能(Jugglable)という言葉はあくまで理論的な用語だと思ってください。ジャグリング可能なパターンであることとそれを実際ジャグリングができるということは全く別問題なのです。(それはいくつかのサイトスワップを練習したことがある人は誰でも思い知らされる事だとは思いますが…)
大切な事なのでもう一度強調しておきましょう。
数列を見たときジャグリングをする事が不可能な事がすぐに分かる場合もあります。これはサイトスワップの法則1を思い出してくれればいいのです。
あるサイトスワップのパターンが与えられたとき必要なボールの数はその数列の数字の和を数列の長さで割ったものである。
ですからもし数字の平均が整数にならないようなものはジャグリング可能ではありえません。例えば532や65といったパターンはジャグリング可能ではありません。
しかしこれはジャグリング可能かどうかを判別する十分条件ではありません。つまり数字の平均が整数になったとしてもジャグリング可能であるとはいえないわけです。例えば次のようなパターンを見てみましょう。
543
平均が4ですから、一見何の問題もなさそうです。しかし実際ジャグリングを始めるとすぐに問題が生じます。1拍目で投げた5のボールと2拍目で投げた4のボールが同じ手に同時に落ちる事になるのです。2拍目の4と3拍目の3も同様です。同じ手に2つ以上のボール(ここでは3個)のボールが来ますから、このパターンはこれ以上ジャグリングすることはできません。(そこでボールを落としてしまうからです。)
ある数列が与えられたときその数列がジャグリング可能かどうかを判別するのに次のような方法が知られています。これは全てのボールがブッキングすることがないかどうか実際に数えて確かめるという方法です。簡単なので是非マスターしてください。
7333というパターンがジャグリング可能かどうか確かめてみましょう。
紙の上に7333と数字を並べてかきます。この下にチェックを入れていくので下側にはスペースをあけておいてください。
| 7 | 3 | 3 | 3 |
|---|---|---|---|
| 7 | 3 | 3 | 3 |
|---|---|---|---|
| * |
次に2番目の3に移ります。同様に1つ右の数字から3つ数を数え、3番目の数字の下にチェックを入れます。(7の下にチェックが入ります。)
| 7 | 3 | 3 | 3 |
|---|---|---|---|
| * | * |
さらに3番目の3に移って同じことをしましょう。(2番目の3の下にチェックが入ります。)
| 7 | 3 | 3 | 3 |
|---|---|---|---|
| * | * | * |
| 7 | 3 | 3 | 3 |
|---|---|---|---|
| * | * | * | * |
これで全ての数についてチェックを入れたことになります。このときチェックが全て違う数字の下についていれば(つまりチェックがブッキングしていなければ)これはジャグリング可能なパターンということになります。
たとえば先程の543ならどういうことになるのでしょう。
5のチェックを入れます。
| 5 | 4 | 3 |
|---|---|---|
| * |
4のチェックを入れます。
| 5 | 4 | 3 |
|---|---|---|
| ** |
この時点でチェックがブッキングしてしまいますからこのテストには不合格と言う事です。
よく似ていますが534というパターンはジャグリング可能です。やってみて下さい。
1つ注意があります。0と言う投げ方はどこにチェックを入れればいいのでしょう。これは0のすぐ下にチェックを入れればいいのです。(つまり自分自身にチェックを入れます。)右に0マス進んだところと考えればいいでしょう。
もう少し数学的にジャグリング可能性を判別する事を考えてみましょう。これをサイトスワップの法則2と呼ぶ事にします。
数列A1,A2,A3,…Anがジャグリング可能のとき A1,A2+1,A3+2,…An+(n-1)をnで割った余りは全て異なる値になる。
このような書き方に慣れていない人もいるでしょうからもっと具体的に書いてみましょう。
今8451613と言うパターンがジャグリング可能かどうか調べたいとしましょう。
まず最初にこの数字の下に0から6までの7つの数字を順番に書き加えます。
| 8 4 5 1 6 1 3 |
|---|
| 0 1 2 3 4 5 6 |
次に上と下を足し算すると
| 8 5 7 4 10 6 9 |
|---|
となります。次にこれらの数字を7(数列の長さ)で割った余りを求めます。
| 1 5 0 4 3 6 2 |
|---|
これは全て異なる値になりましたよね。(0〜6までの数字が1つずつ現れています。)これはこのパターンがジャグリング可能であることを意味しています。
機械的にできる便利な方法です。これらの事実の証明に興味がある方もおられるでしょうから(たいていは興味はないと思いますが)これについてはいくつかの練習問題を作っておきました。後の練習問題の解答を見てください。理論的なことに興味がない方はどうぞ読み飛ばしてください。
以上に述べたのは与えれた数列がジャグリング可能かどうかを判別する方法です。しかしこのことを使って可能なジャグリングパターンが簡単に作り出されるわけではありません。適当に数列を作ってみて、それを判別するという試行錯誤をしなければなりません。(もちろんコンピューターにプログラムを打ち込んで可能なサイトスワップをはじき出させる事は可能です。コンピュータなら試行錯誤は苦になりませんからね。)
もっと簡単にジャグリング可能なパターンを作る方法をここでは解説しましょう。
まず作りたいパターンの数列の長さを決めます。(ボールの数ではありません。どのくらいの周期を持ったパターンを作るのかを決めるのです。)ここでは4にしましょう。
数字を書くための4つの枠を書きます。
| _ | _ | _ | _ |
|---|---|---|---|
まず最初の枠に好きな数字を書きます。次に先程のチェックテストと同じ要領で、その数字分だけ右に数えた所にチェックを入れます。この例では5を入れることにします。右側に5数えてその枠の下にチェックを入れます。ここでは2つ目の枠の下です。
| 5 | _ | _ | _ |
|---|---|---|---|
| * |
次に2つ目の枠に数字を入れますが、ここにはチェックしたとき先程のチェックとかぶらないような数字を入れる必要があります。ここに4,8という数字は入れることはできません。ここには6を入れることにしましょう。今回は4つ目の枠の下にチェックがつきます。
| 5 | 6 | _ | _ |
|---|---|---|---|
| * | * |
さらに3つ目の枠に数字を入れます。さらに条件がつきます。今回は1,3,5,7,9という数字は入れることはできません。うまくチェックがかぶらない数字を入れなければなりません。ここでは2をいれて1つ目の枠の下にチェックを入れます。
| 5 | 6 | 2 | _ |
|---|---|---|---|
| * | * | * |
| 5 | 6 | 2 | 3 |
|---|---|---|---|
| * | * | * | * |
こんなに簡単に見たこともないような新しいパターンが作れるなんてすばらしいと思いませんか。サイトスワップの本領発揮といったところです。
このようにパターンを作るとき注意しなければいけないのは調子に乗ってあまり大きな数字を入れてしまわないようにする事です。うまくジャグリング可能なパターンができたとしても、それが7個ボールのパターンだったらとても挑戦してみる気が起こらないでしょう。最初は1から5くらいの数字を使ったパターンを考えてみることをお勧めします。逆に余り退屈なパターンを作っても仕方がありませんから2という数字を多用しないほうがいいでしょう。また最初に数列の長さを決めますが、この数字を奇数にすれば左右対称なパターンに、偶数にすれば左右非対称なパターンになります。
すでにあるパターンを加工して新しいパターンを作る簡単な方法です。 ここで次の法則をサイトスワップの法則3として紹介しておきましょう。
ジャグリング可能な数列の中の任意の数字に、数列の長さを足したり,引いたりしてできた数列はやはりジャグリング可能な数列である。
これはすでにあるジャグリングパターンをさらに難しくしたり、逆にさらに簡単にしようというときに極めて効果的です。例えば
534
と言うジャグリング可能なパターンがあります。(4ボールのパターンです。)これは少し難しすぎるのでもっと簡単なパターンに変形させましょう。上の法則を使えば任意に数字から数列の長さ(ここでは3)を引いても構わないのです。例えば
234 504 531
は全てジャグリング可能です。これらは全て3ボールのジャグリングパターンです。
逆にもっとこのパターンを難しくしようと思ったら任意の数字に3を足しましょう。
834 564 537
これらは全てジャグリング可能な5ボールのパターンになります。
すぐに分かるように数列の長さを1回足せばボールの数は1つ増え(難しくなるということです)、1回引けばボールの数は1つ減ります。(簡単になります。)
もう少しこの法則の利用法を説明しましょう。たとえば3ボールカスケードは
3
と表しますがこれを
3333
といくら数字を並べて表しても構わないわけです。例えばこの数列の最初の数字に数列の長さ4を足せば
7333
という4ボールのパターンが得られます。
また4ボールファウンテンを
444
と書きましょう。最後の数字から数列の長さ3を引けば
441
という3ボールのパターンが得られます。
同じ発想から
633 744 552 5551
なんてパターンが作り出されます。
これは少し数学的な話です。与えられたサイトスワップをいくつかの基本的なパターンに分解するというもので僕がサイトスワップの法則1の証明を考えているときに思いついたものです。ただ極めて自然な発想なので同じような考え方はすでに存在していても不思議ではありません。
これはサイトスワップの中で1つのボールの動きだけをトレースしようというものです。サイトスワップの中にはさまざまな投げ方が登場しますが、1つのボールに注目すればその全ての投げ方をされているわけではありません。
例えば
534
というパターンを見てみましょう。最初に5で投げられたボールが次に投げられるのは5ビート後です。ですからこの投げ方は4になります。さらに4で投げられたボールは次に投げられるのは4ビート後ですから…再び5で投げられる事になります。つまりこのボールは決して3で投げられる事はありません。絵で書くと
5→→→→4→→→5→→→→4→…
と投げられると言うわけです。
では同じように3で投げられたボールをトレースしてみると
3→→3→→3→→3→→3→…
となります。このボールは常に3で投げられます。
つまり534のサイトスワップの中にはこれら2つの独立したボールの流れがあるということです。これらを軌道と呼ぶ事にします。534のパターンは次のように分解する事が可能です。
504 030
これをサイトスワップの軌道分解ということにしましょう。この分解は一意的です。
容易に分かるように最初の軌道には3つのボールが入っており、2つ目の軌道には1個のボールが入っています。ここで注意して欲しいのはここでの軌道と言うのはあくまで概念的な用語であって、実際にボールが空中に描く軌道とは全く無関係です。(一致する事もあります。例えば504の中の3つのボールは全く同じ軌道を動いています。しかし例えば420といった軌道ではこれは成り立ちません)
複雑なサイトスワップを軌道に分解する事でより簡単なパターンを作る事ができます。それらはいわば元のパターンの一部分なのですから、分解したパターンを練習しておいてもとのパターンを組み立てるという練習に効果的です。
例えば531という3ボールのパターンを練習する上でその軌道の1つである501を練習しておくことは役に立ちます。
もちろんたった一つの軌道からなるパターンも存在します。
441
等はその良い例です。