さて前の項の説明を読んで、数字がどのようなボールの投げ方を表しているのかは理解できたはずです。ジャグリングは右,左,右,左とボールを常に投げているのですから、投げ方を表す数字を順番に並べればジャグリングのパターンを表す数列ができるはずです。
例えば3ボールカスケードの投げ方は3でしたから3ボールカスケードは
3 3 3 3 3 3 3 3 3 …
と言う数列で表現できます。この3はパターンが続く限り永遠に続くのですがそれを全て書くのは面倒です。サイトスワップでパターンを書き表すルールとして
というものがあります。この規則で3ボールカスケードを書き表すと
3
になります。この1つの数字が3ボールカスケードと言うパターンを表現しているのです。この単純さがサイトスワップの強力な武器なのです。
注意:
少しややこしい事を言いますがサイトスワップの数字は投げ方を表すときにもパターンを表すときにも使います。ですから上の数列の3は投げ方を表しており、下の3は“3ボールカスケードというパターン”を表しているものです。以後「3で投げる」「5で投げられたボール」などという表現をよく使いますがこれはサイトスワップの数字が投げ方を表す用例です。
次は3ボールシャワーというパターンを見てみましょう。3ボールシャワーでは右手が常に高めのクロススロー、左手が常にボールを右手に渡します(フィード)。(もちろん左右逆でも構いません。)この投げ方はサイトスワップでは5と1に相当します。ですからこの投げ方を数列で表すと
5 1 5 1 5 1 5 1 5 1 …
です。例によって繰り返しを省略すると
51
と書けます。(パターンを表すときは数字の間にスペースを入れないのが普通です。)

今度は逆にサイトスワップで書かれたパターンを実際にやってみることを考えましょう。ここでは例として
441
というパターンを見てみることにします。先程の注意からこの数列は無限に繰り返すものだと言う事を思い出しておきましょう。
このパターンには4と1という2種類の投げ方が登場します。これらの数字がどのような投げ方に相当するのかちゃんと覚えていますか。分からなければ前の項の図を見直していましょう。4はボールを真上に投げるセルフスロー、1はボールを反対の手に“手渡す”投げ方でしたね。
もう1つ大切なのはボールをどちらの手で投げるかです。これはサイトスワップの前提を思い出しましょう。そうです。左右交互にボールを投げるのでしたね。どちらから始めても構いませんが右手から始める事にしましょう。つまりボールを投げる手とボールの投げ方は次のようになります。
| 投げる手 | 右 | 左 | 右 | 左 | 右 | 左 | 右 | 左 | 右 | … |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 投げ方 | 4 | 4 | 1 | 4 | 4 | 1 | 4 | 4 | 1 | … |
これでボールを投げる手と投げ方が分かりました。早速ジャグリングを始めてみましょう。
っと、ちょっと待ってください。1つ大切な事を忘れていました。このパターンって一体何個のボールが必要なのでしょう。それがわからない限りジャグリングを始める事はできませんよね。そんな大切な事がどこにも書いていないとはどういうことでしょう。
これはちょっとした算数を使えば求めることができます。次の法則をつかうのです。
あるサイトスワップのパターンが与えられたとき必要なボールの数はその数列の数字の和を数列の長さで割ったものである。
(つまり数字の平均がボールの数だということです。)
細かい説明は後回しにしてとりあえずこの計算をしてみましょう。
441ですから3つの数字の平均は
(4+4+1)÷3 = 9÷3 = 3
となります。このパターンには3個のボールが必要である事が分かりました。
これだけの情報があればこのパターンをジャグリングする事ができるはずです。頭の中で考えてみてもなかなか分かりません。実際にやって見ましょう。3つのボールを用意します。右手に2つ,左手に1つボールを持った状態からスタートします。図で説明しましょう。
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まず右手から真上にボールを投げます。これが4の投げ方です。 |
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そのボールが頂点に達したら次に左手から真上にボールを投げます。(図2)同じく4の投げ方です。 |
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右手に最初のボールが落ちてきます。このボールをキャッチするために右手にボールを左手に渡します。これが1の投げ方です。 |
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続いていま渡したばかりのボールを4で真上に投げます。
これで最初の状態と右左逆になります。あとは同様に続きます。 |
最初からうまくジャグリングするのは難しいですが、このパターンが自然にジャグリング可能だと言うことはその雰囲気でも理解できたでしょうか。同時に単なる数列がこのようなパターンを表現している事に少し驚きを持てれた事と思います。
サイトスワップはボールを投げる手とその投げ方、それだけに注目しています。例えばボールをいつキャッチすればいいかは何の説明もありません。にもかかわらず上のパターンを実際にやってみればボールをキャッチしなければならないときには自然に手が空になってボールをキャッチできますし、逆にボールを投げなければならないときには自然に手に投げるべきボールがきています。ボールが同じ手に落ちてきてぶつかるなんてこともありません。
その理由はこの数列が“うまくジャグリングできるように”並べられているからなのです。適当に数字を並べてみてそれがジャグリング可能なパターンになるわけでは決してありません。ではジャグリングがうまくできるように数字を並べるにはどうしたら良いのでしょうか。ジャグリング可能なパターンを表す数列には何か規則性があるのでしょうか。これは誰もが興味を持つ問題だと思います。それを考え始めたとき人はサイトスワップの深遠なる世界に足を踏み入れた事になります。まあそれについては後ほど詳しく説明していきます。ここではサイトスワップになじむ意味でもっといろいろなサイトスワップを取り上げて見たいと思います。もちろんこれからでてくるサイトスワップは全て“ジャグリングする事が可能”なものです。
なおこれらのパターンはすべてジャグリングシミュレーションソフトJuggleMasterを使えば簡単に再現する事ができます。
まずはこのパターンに必要なボールの個数です。サイトスワップの法則1を使えば
(5+5+5+0+0)÷5 = 15÷5 = 3
ですからこれは3個のボールを使うパターンです。
投げ方は5と0の2種類あります。5は5ボールカスケードの投げ方、つまり高めのクロススローです。0は何だったでしょう。そうです。“ボールを持っていないこと”でしたね。やってみればその意味はおのずと分かります。 5と言うのは3ボールカスケードより4倍高い投げ方です。これを3回連続で右,左,右と投げます。そうすると手にはボールがなくなります。これが0の意味です。2ビートの間手が空のまま待って、落ちてくるボールを受け取ります。
このように全てのボールを高く投げ上げて手を空にすることをフラッシュ(Flush)といいます。これはパターンと言うよりも基本パターンの中に挿入するトリックとして使われる事が多いです。
もっと高くボールを投げれば待っている時間はさらに長くなります。
7770000
同じくボールの個数から調べて見ましょう。
(4+2+3)÷3 = 9÷3 = 3
ですから3個のボールを使うパターンです。
ここで2が初登場です。2はボールを持ったまま投げないこと(Hold)だったのを思い出してください。ボールの投げ方と投げる手は以下のとおりです。
| 投げる手 | 右 | 左 | 右 | 左 | 右 | 左 | 右 | 左 | 右 | … |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 投げ方 | 4 | 2 | 3 | 4 | 2 | 3 | 4 | 2 | 3 | … |
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右手に2個のボール,左手に1個のボールを持ちます。 まず右手から4を投げます。これは4ボールファウンテンの投げ方です。 |
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次に左手に移ります。この左手のボールは2で投げます。と言う事は…そう投げないで持っておくのです。つまり何もしないのです。この辺は慣れないとと少し戸惑うところです。 |
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次に右手から3を投げます。これは左手に向かって投げます。(ここで右手は落ちてくる4のボールをキャッチします。) |
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ここで数列の最初に戻ります。今度は左手から4を投げます。これで最初の状態とちょうど左右逆になりますので、あとは先程と同じことを左右逆で繰り返せばいいのです。 |
実際にやってみればそれほど難しいジャグリングではありません。ボールがWの字を書くように動く事からこのパターンをWと呼ぶ事があります。
サイトスワップに登場する2はパターンにちょっとした間をもたらします。2はボールを投げない事を意味するのですから当然の事でしょう。一般的に2を多く含むパターンは簡単な(ある意味退屈な)ものが多いです。
ボールの個数を調べると
(5+3)÷2 = 4
ですからこれは4個ボールのパターンです。
4個ボールの基本パターン(ファウンテン)はボールがクロスしませんが、このパターンはボールがクロスします。4ボールのハーフシャワーと呼ばれる事があります。
直感的に説明すると片方の手は常に5ボールカスケードをし、片方の手は常に3ボールカスケードをしているのです。5の投げ方は3の投げ方の約4倍ということを頭に入れておきましょう。このパターンがうまくいかないときその原因のほとんどが3のボールを高く投げすぎている事にあるようです。
これは4ボールファウンテンの中にトリックとして挿入する事もできます。 数列で書くと
4 4 4 4 5 3 4 4 4 …
となります。4ボールファウンテンの途中で一方の手から高いクロススロー(5)を投げます。そのすぐ後に低いクロススロー(3)を投げます。うまく投げるとリズムを全く壊すことなく4ボールファウンテンに戻る事ができます。
この53のセットは4ボールファウンテンのどこにでも挿入する事ができます。ですから例によってこのトリックを周期的に繰り返すことでいろいろなパターンを作る事ができます。
5回おきに5を投げると
4 4 5 3 4 4 4 5 3 4 4 4 …
となります。パターンとしては
53444
ですがこれは別名4ボールテニスと呼ばれています。5で投げられるボールは常に同じボールなので、同じボールが左右に大きな弧を描いて行き来しているように見えます。(それをテニスのボールの動きに例えているのです。)
3回おきに投げると
4 4 5 3 4 5 3 4 5 3 4 5 3 4 …
ですから
534
というパターンができます。
これは非常に面白いパターンです。もしサイトスワップと言う考え方がなかったら、4つのボールをこのようにジャグリングできるなんて考えは到底生まれなかったでしょう。3つの異なった投げかたが繰り返される様子が見た目に非常にきれいに(複雑に)見えます。
ボールを2回おきに投げると最初の
53
と言うパターンになります。
これらのパターンを観察してみて、数列の長さが奇数のときはパターンは左右対称に繰り返され、偶数のときはパターンは一方方向に偏って繰り返される事に気づくと思います。その理由は手が左右交互にボールを投げている事を考えれば容易に理解できると思います。
さて次の項でさらに面白いさまざまなサイトスワップを取り上げましょう。だいぶサイトスワップの面白さが分かってきたのではないでしょうか。