
ロール(Roll)とはボールを転がす技術です。ジャグリングではボールを投げるだけでなく、転がす事も重要な技術の1つです。
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| §7-0 | イントロダクション |
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ボールジャグリングでは投げるという行為は最も基本的な動作です。実際ジャグリングされているボールはそのほとんどの瞬間空中に浮いており、それが体に接している時間はごく短いものです。投げる事を主体にしているジャグリングを特にトスジャグリング(Toss Juggling)と呼びますが、ボールジャグリングといえば何も言わなくてもこのトスジャグリングを指すのが普通です。
しかしそれに対して一切ボールを投げることなくジャグリングするという分野もあります。ボールを投げないのならどうやってボールを移動させるのでしょう。その答えはこの節で解説しようとしていること、つまりは転がすということです。ボールを転がす事によってジャグリングをする分野を特にコンタクトジャグリング(Contact Juggling)と呼びます。一般的にボールを転がすのは投げるよりもはるかに難しい技術です。
ボールを転がすトリックを総じてロール(Roll)と呼ぶことにします。容易に想像できるとおりロールはそのほとんどがコンタクトジャグリングの技術に由来しています。この節ではジャグリングの中で使われるロールにスポットを当て、できる限り多くのトリックやそのアイデアを紹介していこうと考えていますが、そのいくつかは紹介だけにとどめ、具体的な練習方法には触れていません。なぜならこの章の目的はコンタクトジャグリングについて解説することではなく、あくまで主体はトスジャグリングだからです。コンタクトジャグリングはジャグリングの1つの分野を形成するほど奥の深いものですから、改めて1つの章を設けなければとても解説し尽くすことはできません。
転がるというのは物体があるものと常に接触を保ちながら移動する事です。大切なのはボールが転がっている時、そのあらゆる瞬間でボールは完全なバランスが保っているということです。例えばボールが腕を手首から肘に向かって転がっているとすると、ボールがどの地点にあるときでもボールと腕の間には完全な力の均衡が成り立っています。そうでなければボールは腕を転がる事をやめ、重力に従って床の方向に滑り落ちるはずです。つまり物を転がすという事は連続的なバランスの維持だといってもいいでしょう。
このバランスの維持を助けるのが惰性(もしくは慣性)といわれる力です。物が速く進めば進むほどバランスの維持は楽になります。これは走っている自転車が2つの車輪でバランスを保っていられるのと同じ理屈です。自転車でゆっくり進むほどバランスを取るのが難しくなるのと同じように、ゆっくり転がそうとすればするほど難易度は高くなります。
| §7-1 | 腕のロール |
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腕でボールを転がす時、手の甲を上に向けて転がす方法と、手の平を上に向けて転がす方法の2通りが考えられます(以下では腕の背、腕の腹と表現する事にしましょう)。
ボールを指の上に置いてバランスを取ります。ここから肘の辺りまでボールを転がしてみましょう。
こう書くと大抵の人は手を傾けてボールを転がそうとします。しかしこれではまずうまくいきません。このトリックを成功させるための大きなポイントは手を傾けてボールを転がそうとするのではなく、手を水平に保ったままボールの進行方向と反対の方向に手を動かすのです。ボールはほとんど空間上の位置を変えません。これは慣性の原理の応用です。
肘まで転がったボールはそこで落下して、そこで待ち構えている反対の手でキャッチされます。もしくはバウンスの要領で肘でボールを軽く跳ね上げて手に戻してもいいでしょう。
難しいですが肘でボールをキャッチして指先まで転がすこともできます(上のリバースです)。
カスケードの中にこのロールを挿入してみましょう。これはサーフィン(Surfin)と呼ばれるトリックです。
カスケードから右手でフォークキャッチ(§5キャッチを参照)をします。ここから上で説明したようにボールを右腕に沿って転がし始めます。
左手はアンダーザハンドを投げるような要領で右ひじの下から垂直にボールを投げ、転がって落ちてくるボールをキャッチします。
すかさず両腕を元に戻し、カスケードに戻ります。
例によってこのトリックをさまざまな周期でおこなってパターンに発展させてみましょう。もちろんリバースの可能性も忘れてはなりません。
片手でこのようなトレーニングをしてみましょう。右手にボールを持って前に差し出します。次に右手のボールを軽く投げ、右手の甲に乗せ、ここからボールを肘の方向に転がします(あるいは手を前に押し出します)。ボールが肘まできたら肘を軽く持上げボールを跳ね上げます。そして同時に右腕は肘をピンと伸ばして手首を外側に曲げながら下に降ろします。うまくいけばボールは待ち構えている手の中に落下します。これはよくテニスプレーヤーがしている暇つぶしです。
左手で2イン1ハンドをしながら、右手でこのトリックをしてみましょう。左右の手が別々の動きをするので、かなり難しいでしょう。しかしそれができたら次のようなすばらしい技に発展できます。3ボールカスケードから左手の2イン1ハンドに移り、すかさず右手は上のトリックを始めます。右手がボールをキャッチしたら、すぐに3ボールカスケードに戻るのです。非常に印象的なトリックです。
さらに難しくするなら、右手がボールをキャッチしたらそれをそのままバッククロスやショルダースローで投げて、3ボールカスケードに戻して見ましょう。
腕の背とほとんどやり方は同じです。ボールを持った状態から手を上に向けたまま、そのボールを関節の部分まで転がしてみましょう。熟練すると関節の部分でボールを静止させる事もできます(§5キャッチのプレイスメントを参照)。静止させたボールを再び手の平に転がして戻してあげましょう。これはコンタクトジャグリングの最も基本的な技術です。
上で解説したサーフィンと同様、このロールもカスケードの中に取り入れることが可能です。面白いのはこのロールを右手で連続的に行なうパターンです。左手は常に右手にボールを投げ、右手でキャッチされたボールは関節の部分まで転がり、そこで待っている左手でキャッチされます。この間右手は固定されたままほとんど動きません。
| §7-2 | 頭のロール |
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ボールを頭の上で転がしてみましょう。これにはいくつかの方法があります。
簡単な方法は、ボールを頭の頂点よりやや前方におき、そこからボールを前にすべり落とす方法です。手が行なう事はボールを置く動作だけで、後は重力がボールを動かします。ボールを置く場所を変えることで、前方だけでなく左右や後ろにすべり落とす事も可能です。
次の方法はもっと積極的にボールを転がす方法です。ボールを耳の上辺りから横方向に手で勢いをつけて転がします。このとき頭は動いてはいけません。ボールは山を越えるように頭上を転がり、反対側からすべり落ちます。
これはカスケードに頭のロールを挿入するトリックです。
カスケードで右手のボールを投げる代わりに、頭の上に置きます。この場所は先ほど説明したとおり頂点よりやや前方です。手を離すとボールは自然に前方に滑り落ち始めます。
右手はすかさず左から飛んできたボールを上からキャッチします(クローキャッチです)。キャッチするポイントは軌道のほぼ頂点です。
左手のボールを投げ、頭から落ちてきたボールを受け取ってカスケードを復活させます。
ボールを前だけではなく、横や後ろにもすべり落としてみましょう。後ろに落とす場合は左手は背中の後ろ(腰の辺り)でボールをキャッチします。またすべり落とすだけでなく、ボールを右から左に転がす方法でも試してみましょう。
例によってこのトリックを発展させると非常に面白いパターンができます。
これは誰の目にも現象が分かりやすく、インパクトの強いパターンです。ボールの軌道はカスケードとは全く変わってしまいます。
右手連続で頭の上にボールを運ぼうと思ったら、右手を下げていてはとても間に合いません。右手はボールをその軌道の頂点で上からキャッチし、それをほぼ平行に移動させて頭の上に運びます。ボールを投げる左手の位置、ボールを取る右手の位置、そして頭の頂点を結ぶと上下が逆の直角三角形になるイメージです。このパターンはキャリー(Carry)というジャグリングパターンに感覚がとても似ています。うまくリズムがつかめない人はこのパターンを練習してみてもいいでしょう(但しどちらも同じくらい難しいパターンです)。
右手も左手も頭の上にボールを運び、次の瞬間落ちていくボールをクローキャッチします。難しいですが可能です。
これはここでは簡単な紹介だけにとどめますが、コンタクトジャグリングの驚異的な技術です。手を使うことなく頭の動きだけでボールを転がすトリックです。ボールをフォアヘッドキャッチの場所で静止させ、そこから頭を滑らかに転がしてこめかみの部分で静止させます。もしくは一方のこめかみからもう一方のこめかみに移動させます。
このときも実際に動いているのは主に頭であり、ボールは空間上の位置をほとんど変えません。
習得には時間がかかりますが、一旦コツを覚えると決して体が忘れる事はありません。
| §7-3 | 背中のロール |
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ボールを背中で転がすトリックです。体を前に倒せば背中はボールを転がすには格好の平面になります。ボールを首から腰の方向に転がすことも可能ですし、右左に転がす事も可能です。背中のロールはネックキャッチと相性がいいものです。下ではネックキャッチから背中でボールを転がし、キャッチする方法を取り上げます。
まずはネックキャッチから練習するといいでしょう。ネックキャッチについては「§5 キャッチ」を参照してください。
ネックキャッチの状態でボールを静止させます。この状態から体を起こし、ボールを背中の中央に沿って転がします。ボールが背中を転がる感触をしっかりと感じてください。ボールは腰の位置で待ち構えている手の中に自然に入ってきます。このボールはブラインドキャッチ(ボールを見ないでキャッチすること)になりますが、ボールが背中を転がる感触を頼りにすれば難しいものではありません。
この方法でネックキャッチからカスケードを復元する事もできます。これは頭で跳ね上げるよりも(少しだけ)簡単な方法です。
このトリックを一方の手で連続で行なう事もできます。これはオフザヘッドのところで解説したのと同じ要領です。左右連続にも挑戦してみましょう。
これは背中を転がるボールを又の間からキャッチする方法で、ネックキャッチからの面白いつながりです。ネックキャッチをしたとき足を肩幅より少し広めに広げておきます。ネックキャッチから上と同様にボールを背中の中央に沿って転がします。但し今回は体を完全に起こすのではなく、お尻を突き出すようにして、軽く体を傾斜させるのです。ボールはゆっくりと背中を転がり、お尻のところで重力に従って落下します。このボールを又の間から伸ばした手でキャッチします。意外性の高いトリックです。成功させるコツはボールの勢いを十分に殺す事です。勢いがつきすぎるとボールが手が届かないほど遠くに飛んでいきます。
| §7-4 | その他のロール |
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今度は上とは逆に体を後ろに反らせます。そうすると胸がボールを転がすテーブルに早変わりします。自分のインスピレーションの赴くまま、ボールをいろいろな部分で転がしてみましょう。バウンス(§5)やチントラップ(§4)と組み合わせても面白い事ができるでしょう。
これにもいろいろなアイデアが考えられるはずです。例えば両膝を立てて腰を降ろし、両膝の間でボールを転がして見ましょう。これは転がすためのレールがついているようなもので非常に簡単です。
これは手の指の上に置いたボールを腕と胸の上を経由して反対の手に送るというコンタクトジャグリングの高度なトリックです。手を右と左に伸ばして直線的にボールを転がす方法と、腕と胸で大きな円を作りその内側を沿うように転がす2つの方法があります。また胸を通す代わりに、首の後ろを通すバリエーションもあります。
これも紹介だけにとどめますが、手のひらの中でボールを転がす面白い技術です。上級者は2つ、3つのボールを手の中で互いに触れ合わせることなく転がします。指はまるで繊毛運動のような動きでボールを回転させるのです。また2つの手で3つから5つのボールをカスケードのように転がす事もできます。
