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ボールジャグリング教本 第1章 ジャグリングの基本パターン

2007.5 Juggling教本を大幅にリニューアルいたしました。
こちらは旧版になりますので、最新版は以下のページを参照してください。
Juggling 教本

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§1 3ボールカスケード

ジャグリングの基本中の基本。3ボールカスケードの解説をします。この項は全てのジャグラーが必ず読むべきものです。
Index
§1-0イントロダクション
§1-11個のボールでの練習
§1-22個のボールでの練習
§1-33個のボールでの練習
§1-4カスケードの問題点と解決法
§1-5さらに安定させるためのヒント
§1-6パターンを終わる事


§1-0イントロダクション
ボールジャグリングの基本は3個のボールから始まるというのは多くの人が納得するところでしょう。その理由はきわめて単純です。人間の手が2本だからです。

ボールジャグリングの基本は3個のボールから始まるというのは多くの人が納得するところでしょう。その理由はきわめて単純です。人間の手が2本だからです。ボールが2個しかないなら片手に1個ずつボールを持っていれば事足りますが、3個なら必ず余った1個のボールは空中になければなりません。そのためには常にボールを投げつづけている必要が生じます。つまり3個のボールを人類が手にしたとき、はじめてジャグリングをする必要に迫られたというわけなのです。

3ボールジャグリングは最も単純なジャグリングでありながら、実に多くのバリエーションがあります。たかだか3つのボールからどれほど多くの技が考えられているか、その数には誰もがまず驚かされることでしょう。コミカルで面白いものから、芸術的な美しいパターンまでその性格もさまざまです。3ボールジャグリングの持つ単純さや対照性は数学者の興味の対象にもなっています。いろいろな数学的手段によってさらに多くのジャグリングパターンが発見されました。3ボールの炭坑はすべて掘り尽くされてしまったのでしょうか。いやいやそんなことはありません。まだなお多くの未開の領域が残されており、世界の飽くなき探検家たちは今も新しい技を開拓し続けています。人間の想像力というものに終わりがない限り、3ボールジャグリングの可能性も無限に広がっているのです。

多くのジャグリングパターンは互いに密接に結びついています。ジャグリングの技と言うのは単純な技でも少しずつ変化させていくことで難しい技、複雑な技に進化していくものだからです。その結びつきはまるで家系図を見るようでもあります。面白いことにこの家系図に沿ってすべてのジャグリングパターンの祖先をたどっていくと実はあるひとつのパターンに到達します。あらゆるジャグリングパターンはこのパターンを基本としていると言ってもいいでしょう。これがかの有名な3ボールカスケードです。

3ボールカスケードは初心者がまず真っ先に練習しなければいけない技です。すべてのジャグラーが通るべきボールジャグリングの登竜門ですが、これがなかなか簡単なことではありません。最初は誰もがうまくできなくて四苦八苦します。この段階であきらめてしまう人も多いようです。しかし聞いてください。3ボールカスケードは一旦慣れてしまえば走ったり、自転車に乗るのと同じくらい自然で、簡単なことなのです。段階を踏んで地道に練習すれば必ずできるようになります。それを習得したときあなたはジャグリングの楽しさと言うものを実感することでしょう。その前にあきらめてしまうなんてこんなにもったいないことはありません。

この教本ではまず最初に3ボールカスケードのやり方に多くのページを割き、懇切丁寧にそのやり方、習得へのアプローチを解説していきます。なにか問題にぶつかったらこのページをゆっくり読み直してください。必ず何かヒントが見つかるはずです。

3ボールカスケードの解説にはボールジャグリングをする上での本質的な注意点やアドバイスをたくさん含めておきました。ですからジャグリングの上級者や中級者の方が読んでも十分有用なものかと思います。

■3ボールカスケードの観察

図1

もう一度3ボールカスケードをよく観察してみましょう。

カスケードが持っている以下の美しい性質をもう一度確認してみましょう。

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§1-11個のボールでの練習
Q.ジャグリングの基本は何ですか。
A.ボールを投げること、ボールを取ること、それと…
Q.それと?
A.ボールを落とす事です。

いきなり3つのボールを使ってジャグリングしなさいといわれても無理な話です。そもそもどのボールを投げて、どのボールを取ったらいいのかすら見当もつきません。結局全部のボールを床に落としてしまうのがオチです。でも何度か挑戦してみても面白いでしょう。ためしに適当にボールを投げて、ボールを受け取ってみましょう。そして思う存分ボールを床に落として見ましょう。全てのジャグラーが一番最初に学ぶこと。それはボールを落とす事です。

図2

ジャグリングをするためにはただ適当にボールを投げてつかめばいいのではありません。ジャグリングに必要なのは

すべてのボールを

投げることができることなのです。これは案外大変なことなのですよ。

それではさっそく練習を始めましょう。まずは2個のボールは床に置いて、たった1個のボールだけを使って練習します。1個のボールを投げて、キャッチするという練習をこれから行なうのです。そんなこと誰でもできると思うでしょう。しかしこれが全てのジャグリングの基本なのです。どんな上級者でも新しいトリックを練習する時は必ず1つのボールの練習から始めると言われています。それは1個のボールならボールの軌道や高さ、自分の姿勢など細かいところに最大限に注意を払うことができるからです。

ですからこれから行う練習を決して馬鹿にしてはいけません。もっと多くのボールを使って練習する段階になっても、うまくできなくなったら必ずこのステップに戻ってきてください。

練習1-1-1ボールを真上に投げ上げてキャッチする。
目標右手と左手が同じ高さにボールを投げる感覚をつかむ。

肩の力を抜いてリラックスします。

まずはボールを右手に持ちそのボールを体の中心から真上に投げ上げて、落ちてきたボールを左手でキャッチして見ましょう。

次は左手から同様にボールを投げ上げて右手でキャッチします。

この練習は必ずこの2つをセットにして行ってください。

ポイントは次の3点です。

  • ボールはお腹のあたりから投げ上げ、お腹のあたりでキャッチする。
  • ボールを投げる高さは常に一定である。
  • ボールが体から離れたり、体のほうに近づいてきたりしないようにする。

右手で投げたボールと左手で投げたボールが同じ高さまで上がることがこの練習で最も大切なことです。頭の高さくらいに投げるのを目安としてください。右利きの人はたいてい右手の方がボールを高く投げてしまいがちですが、2つの手が同じ高さにボールを投げる癖をつけましょう。投げたボールは投げた地点で受け取ります。もし自分が手を伸ばしてボールをつかみにいっていることに気づいたら、それはボールが正しく投げられていないからです。

ボールを投げるときボールが体から離れていったり、遠ざかったりするのも初心者にはよく起こる問題です。自分の前に平らな壁があるとイメージしてください。ボールは常にその壁の上を動くのです。

ボールは手首のスナップだけを利かせて投げようとするのではなく、腕全体を使って投げるように心がけましょう。

この練習をしていると自然にボールが右手から左手は、または左手から右手に弧を描いて飛んでいくのに気づくでしょう。この動きをさらにスムーズにする練習を次に行っていきます。

練習1-1-2ボールが弧を描くように投げる。
目標右手から投げるボールと左手から投げるボールが左右対称な弧を描くようにします。

肩の力を抜いてリラックスします。

手は肩幅より少し広めに広げ、腰のあたりにおいておきます。

次はボールを右手に持ち、そのボールを体の中心から心持ち左に投げてみましょう。投げる高さは先ほどと同様頭の高さぐらいを目安にします。それを左手でキャッチします。キャッチする場所は体の外側で、自分がボールを最も自然にキャッチできる位置です。ボールは空中に放物線の軌道を描きます。

同様のことを今度は左右逆に繰り返します。

この練習もここまでを必ず1セットとして行ってください。

ポイントは先ほどとほぼ同様です。

  • ボールはお腹のあたりから投げ上げ、腰の高さで受け取ること。
  • ボールの軌道が左右対称になること。
  • ボールが体から近づいたり、遠ざかったりしないこと

を意識しましょう。

ボールの動きは左右対称ですが、ボールの軌道の頂点は一致しません。目線のすぐ上あたりの空中に2つの点をイメージしてください。ボールの頂点が常にその2点にくるように意識してみましょう。繰り返しますが右手と左手でボールが偏った軌道を描かないように注意しましょう。

図3

慣れてきたら今度は手を見ないでもボールがつかめるようにしましょう。

目線は常にボールの軌道の頂点を見ています。難しく思えるかもしれませんが、案ずるより生むがやすし。要は慣れの問題です。この練習をするとボールの頂点付近の動きから落ちてくる場所が推測できるようになります。この感覚は非常に大切です。目線が固定するとよりリラックスしてボールが投げられるようになり、ボールの軌道は安定します。

ボールをつかんでから投げるまでの間隔をできるだけ短くしてみましょう。これは次のステップにつながる練習です。

さてここまでの練習は投げたボールをつかむことに重点をおいていました。ここではもうひとつの大切な動き、つまりつかんだボールを投げることに重点をおきましょう。

先ほどの練習でボールは体の中心から投げ、外側でキャッチするということを説明しました。逆にいえば外側でキャッチしたボールは体の中心で投げなければならないということです。これを連続して行おうとすると手はボールをすくい上げるような動きをします。これはカスケードに発展していく上で大変大切な動きなのです。

練習1-1-3カスケードの動きに近づける。
目標ボールをすくい上げる動作をマスターする。

まず先ほどと同じように一方の手からボールを投げ、体の外側でこのボールをキャッチします。ボールをキャッチした手は動きを止めず、下向きの弧を描いてすくい上げるような感じでボールを体の中心に運び、そのボールを再び体の中心から投げます。このボールを反対の手でキャッチしてストップします。

図4

この練習を左右交互に練習しましょう。

ボールをすくい上げる動作は多少オーバーなくらいに意識して行いましょう。慣れてきたらこの動きを連続で行います。スムーズに行うと手が腰のあたりで円を描くようにくるくる動きます。ちょうど走るときの腕振りのような感じです。これが実際のカスケードの動きなのです。

もちろんここでも先ほどまでの注意は常に意識しなければなりません。たくさん出てきましたのでここでもう一度おさらいしておきましょうか。

高々1個の練習でもずいぶん注意すべき点があるでしょう。これらはすべて3ボールカスケードに必要な事柄です。しかしこれだけの事を考えながら3つのボールをジャグリングするなんてことは普通の人には無理な芸当です。だからこそ1つのボールで練習する時に意識するのです。何度も何度も1個のボールの練習を繰り返して、何も考えなくても体が正しい動きをしてくれるようにしてください。

左手と右手で50回ずつこれらの練習をしてみてください。

退屈してきましたか?分かりました。それではいよいよ2つのボールを使った練習に移りましょう。

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§1-22個のボールでの練習
この練習でもうひとつよく起こる間違いが2つ目のボールを投げずに直接右手に渡してしまうというものです。これが日本人に広く蔓延している悪名高き「渡してしまう病」です。

まずは2個のボールを両手に持ちましょう。

ここで練習するのは3ボールカスケード習得の最大の鍵です。これからやることは“ボールの入れ替え(Exchange)”という動作です。まずは以下の説明をよく読んでやるべきことを理解しましょう。

練習1-1-4ボールの入れ替え(Exchange)
目標右手と左手のボールを交互に投げて入れ替える動作をマスターします。

1 ボールを両手に1個ずつ持ちます。左手のボールをA、右手のボールをBとしましょう。

2 まず左手のボールAを先ほど練習したのと同じように右手に向かって弧を描くように投げます。

3 このボールAが軌道の頂点に来たとき、今度は右手のボールBを左手に向かって同様に投げます。このときボールは落ちてくるボールAの下側を通ります。

4 ボールを投げた手はすぐに落ちてくるボールAをつかみにいきます。

続いて右手から投げたボールBを左手でつかみます。これで2つのボールが入れ替わったことになります。"ボールの入れ替え"が成功です。

もちろん同じことを右手からも繰り返します。

図5

実際のボールを使って練習する前にまずは想像上のボールを使ってやるべきことをイメージしてみましょう。このように難しいことを練習しようとするときはまず空中にボールをイメージしながら行うことをお勧めします。その利点は自分のペースでいくらでもゆっくりボールを動かすことができることと、何度やってもボールを落とすことはないことです。納得するまで何度も繰り返しましょう。

ボールを投げるリズム、受け取るリズムに注目してください。投げる、投げる、取る、取る、という4つの動作が等間隔で起こります。このリズムをしっかりつかむことが大切です。

手を動かしながら

投げる、投げる、取る、取る、

と口に出して言ってみましょう。

行うことを十分理解したら実際にボールを持ってやってみましょう。最初のトライでうまくいく人はまずいません。投げる動作自体は1個の練習で行ったこととを交互にすればいいのです。2つのボールは左右対称の弧を描いて同じ高さにあがらなければなりません。どんなに頭でわかっていてもやってみると手は思うとおりに動いてくれないものです。とくに多くの人が2つ目のボールがうまく投げられないで苦しむことになります。なぜ同じことなのにできなくなるのでしょう。

1個目のボールを投げるのはおそらく何の問題もないでしょう。しかし次の瞬間パニックが起こります。このボールを取るための手に2個目のボールが握られています。一刻も早くこのボールを投げなければなりません。思考停止です。さっきまであれほどきれいに投げられていたボールがあさっての方向に飛んでいくことになります。

図6

このように2つ目のボールが低くなったり、前に飛んでいったりするといった症状が起こる人は1つ目のボールを取ることに意識がいくあまり、慌てて2つ目のボールを投げようとしているのです。最初のうちはどうしてもボールを落とさないようにすることだけに意識がいってしまうものです。しかしジャグリングが安定して続いていくためにもっとも大切なのはまずは“正しく投げること”を習得することです。正しく投げることができなければそのボールを取ることはできません。

ここではボールを取ることをいったん忘れましょう。とりあえずボールを“投げる”練習だけをしてみることにします。ボールを落とすことが前提ですから、そのたびごとにしゃがんでボールを拾うのは大変です。床にひざをついてボールが落ちてもすぐに拾えるようにしておくといいでしょう。その状態から2つのボールを交互に投げてみましょう。1つ目のボールが軌道の頂点にきたら2つ目のボールを投げます。ここではボールを取る必要はありません。ボールが左右対称に同じ高さまであがることだけを意識します。1個の練習で行ったように空中に2点をイメージしてボールの頂点がそこにくるように投げるといいでしょう。

ボールが床を打つ音にも耳を傾けましょう。ボールを投げたのと同じリズムで、ボールが床を打たなければなりません。

タン・タン−タン・タン(投げる、投げるー落ちる、落ちる)

と言うリズムです。

タン・タン−タタン

ではいけません。

それができるようになったら今度はボールをキャッチする練習です。この練習では今までにない新しい動作がひとつ加わります。それは

ボールを投げた手で、すぐにボールをキャッチする

という動作です。といっても無理矢理ボールをキャッチしようとする必要はありません。自然にボールは手の中に入ってきます。

時間は十分ありますので慌てる必要はありません。まずは手を肩幅より少し広めに開いて、肩の力を抜き、リラックスして立ちましょう。1個の練習を思い出してください。ボールは体の中央で投げ、体の外側でキャッチするのでしたね。ですからボールを投げた手は小さく上向きの弧を描いて次のボールを取りにいくことになります。ボールを受け取る高さはボールが手から離れた高さより少し下になります。最後に投げたボールも同じ高さでキャッチするように心がけましょう。空中に手をのばしてボールを取りにいってはいけません。ボールが落ちてくるまで待つのです。

もうひとつの重要事項はボールを取る瞬間に手を見ないということでした。目線は常に空中の2点を見つめています。

うまくできたら今度は左右逆でやってみましょう。つまり左手からボールを投げ始めることになります。最初の段階で一方だけを偏って練習してしまう癖はつけないようにしましょう。最初から右左交互に練習すればすむことです。

この練習でもうひとつよく起こる間違いがあります。2つ目のボールを投げずに直接右手に渡してしまうというものです。これが日本人に広く蔓延している悪名高き「渡してしまう病」です。いったんかかってしまうとなかなか抜け出せなくなる困った病気です。しかも終わりの状態は同じなのでつい、これで成功したと勘違いしてしまうのでなおさらたちが悪いのです。

図7

これをやってしまう人はおそらく2つや3つのボールで以前にお手玉をした経験がある人でしょう。日本のお手玉ではボールを一方方向にまわします。ですから一方の手は常にボールを投げ、もう一方の手は常にボールを渡します。この渡す動作に慣れている人は、1つ目のボールを受け取るために2つ目のボールを反対の手に手渡すという間違った解決をしてしまうのです。お手玉経験者はいったんこの渡す動作を忘れてしまうことからはじめなければなりません。これから行うパターンはまったく違うものだということを頭に置いておきましょう。

ある程度安定してきたらリズムを聞きましょう。投げる、投げる、取る、取るという4つの動作が等間隔になっていますか?2つ目のボールを投げるタイミングが早くなっていないか、最後の取るリズムが早くなっていないか、注意してみましょう。うまくいっていない場合、大抵の理由は2つのボールが同じ高さにあがっていないことにあります。また2つ目のボールを取ることをあせってボールを手を伸ばして取りにいってしまうこともリズムを壊す原因です。

この動きを左右連続で50回ずつ練習しましょう。

このパターンが安定してできるようになれば3ボールカスケードに必要な技術の90%をマスターしたといってもいいでしょう。さあ、もう一息です。

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§1-33個のボールでの練習
部品を組み立てて1つにする

さてそれではいよいよ3ボールカスケードに挑戦してみましょう。幸運な事に実は3ボールカスケードをするために必要なことの説明は、先ほどまでの1ボール、2ボールを使った練習の中で全て終わっています。ですからここで新しく登場する技術はほとんどありません。あとは今までやってきたことを組み立ててみるだけのことです。

一言で言えば3ボールカスケードは先ほど練習した「ボールの入れ替え」を左右交互に行うことに他なりません。右手からボールを投げ、それが軌道の頂点にきたときに左手からボールを投げます。これが最初のボールの入れ替えです。次に左手から投げたボールが軌道の頂上にきたら、右手からボールを投げます。これが次のボールの入れ替えです。これで最初の状態に戻るのであとは以上のことを繰り返せばパターンは永久に続いていきます。(もちろんボールを落とさない限りですが…)

なぜ人間の手は2個しかないのに3個のボールを“保持できる”のか、その仕組みがわかってきましたか。右手にボールが落ちてきます。ところが右手はふさがっているのでこのボールを取ることができません。そこで右手はとりあえず持っているボールを左手に向かって投げ、空中のボールを受け取ります。これで右手の問題は解決しますが、新たに問題が生じます。そう、今度は左手が落ちてくるボールを取ることができないので途方にくれてしまうのです。結局左手も持っているボールを右手に投げて、このボールをつかむことになります。このように右手と左手が抱えている問題(手の数よりボールの数が多い!)を押し付けあい、結局根本的な問題は何一つ解決されないまま空中に漂っているのです。もしどちらかの手が根本的な解決策に踏み切ろうとしたなら、ジャグリングなんてする必要はなかったのです。それはもちろん片手に2つのボールを持てばいいという単純なことなのですが。

さて先ほど「ボールの入れ替え」を左右交互に行うことができれば3ボールカスケードは永久に続けることが可能だといいました。しかし(数学的帰納法によれば)もうひとつ大切な条件が抜けています。それは3ボールカスケードを始めることができるということです。

■3ボールのスタート

3ボールカスケードは一方の手に2つのボールを持った状態から始めます。2つのボールを持った手はその状態から1つのボールだけを投げることができなければなりません。聞いた印象ほど難しいものではありません。

1つのボールを手の平に、1つのボールを手の指の上に乗せ、軽く手を握ります。一般的には手の平側のボールは薬指と小指で、手の指側のボールは親指、人差し指、中指で保持されます。

図8

最初に投げるのは手の指側のボールです。もうひとつのボールは飛ばないように薬指と小指が押さえています。手首のスナップではなく、腕全体を使ってボールを投げ上げるようにしましょう。。指の力を緩めるだけでボールは自然に空中に飛んでいきます。 このスタートは右手、左手どちらからでも行えるようにしておきましょう。

■3回続けてみよう

ここで行うことはボールを3回投げてストップする練習です。つまり2個のボールで練習した“ボールの入れ替え”を2回だけ行うのです。

練習1-1-53ボールフラッシュ
目標3つのボールを全て投げ、全てキャッチする

1 右手に2個、左手に1個のボールを持ってスタートします。

2 右手からボールを投げます。

3 そのボールが軌道の頂点に来たら、左手のボールをそのボールを下側を通るように投げます。(1回目のボールの入れ替え)

4 左手のボールが軌道の頂点に来たら、右手のボールを再びそのボールの下を通るように投げます。(2回目のボールの入れ替え)

5 そのボールを左手でキャッチしてパターンをストップします。(左手は2個のボールをつかんでいることになります。)

図9

最後の状態はちょうど最初の状態の逆になります。つまり左手に2個、右手に1個のボールがある状態です。この状態から再び先ほどと同じことをやってみましょう。左手からボールを投げ上げてスタートし、先程と左右逆のことを行います。

これで最初の状態に戻ります。ここまでを1セットとして練習を行ってください。

このように持っているボールを1回ずつ投げ、1回ずつキャッチすることをフラッシュといいます。フラッシュの練習は基本パターンの習得には極めて大切なものです。

たった3投ですが、その中にも多くの問題が生じることでしょう。しかしこれらの問題は全て1個の練習や2個の練習ですでに直面しているものです。正しい姿勢をとり、リラックスして立ちましょう。目線は常に軌道の頂点を見ています。

次のことをチェックしてみてください。

  • 全てのボールは同じ高さにあがっているか。
  • ボールは平面状を動いているか。
  • ボールを投げるリズム、取るリズムは一定か。

これらのことがスムーズにできるようになったら、もうパターンをとめる必要はありません。同じことを繰り返せば(理論上は)何回でもカスケードを続けることができるのです。同じ要領で4回、5回と徐々に回数を増やしていくのがいいでしょう。最後はどちらかの手にボールを集めてパターンをストップします。

ゆっくりと体が3ボールカスケードの感覚を覚えていくはずです。あとは何度も何度もボールを投げて練習してみましょう。ゆっくりですが、確実にボールを投げる回数は増えていくはずです。10回になり、20回になり、ゆくゆくは何100回でも続くようになります。徐々に回数が増え、感覚がつかめてくる瞬間は本当にうれしいものです。どうぞ練習を楽しんでください。そしてもしうまくいかなくなったら、少し立ち止まってチェック事項を確認したり、必要ならもう一度1個や2個のボールでの練習に戻ってみましょう。そうすることで1個や2個のボールでの練習の意味が改めてよく分かってくるはずです。

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§1-43ボールカスケードの問題点と解決法

ここでは初心者がよく陥る問題点や疑問をまとめておきましょう。

◆徐々に前に進んでしまう。

これは非常によく起こる現象です。初心者は知らず知らずのうちにカスケードをしながら前進していきます。その原因は(あたりまえですが)ボールを前方に向かって投げてしまっているからです。そのボールを取ろうと体は前方に進み、その結果次に投げるボールはさらに前方に飛んでいきます。こうして徐々に速度を増し、最後は恐ろしいスピードで前に走り出してしまう羽目になります。 基本的には前進することはそれほど悪いことではありません。むしろ前進してもボールを落とさずに続けることができればそれでいいのです。徐々にカスケードが安定していけば自然に治っていく癖です。

図10

しかし最初の段階でボールが前方に飛んでいく人は、ボールが平面状を動くように投げることを意識しながら1個や2個のボールでもう一度練習してみましょう。よく言われるのは壁の前に立って練習するとよいということです。そうすることが物理的にも心理的にもボールを前に投げることの抑制力になります。また膝をついてジャグリングしてみるという方法もあります。(この状態で前に走り出せる人はまずいません)

◆徐々に回転していく

これもよく起こる現象で別名「コリオリの力」とも呼ばれています。これは地球の自転によって知らず知らずのうちに体が一方方向に回転を始めるという自然現象です。(もちろん冗談ですよ ^^!)

図11

その原因は左右の投げ方が不均一であることです。ですからこの症状は前進していくことよりも厄介なものです。ただ意識的に修正しようとしてはいけません。そのことによってかえってパターンがぎこちなく、不均一なものになってしまいます。一番の解決策は何も考えずリラックスして投げることです。1個や2個のボールの練習に戻って右と左を対称になげることを特に重点的に意識してみるといいでしょう。

◆ボールを投げる余裕がなくなってくる

4回、5回と投げるうちに徐々にボールを投げる余裕がなくなってボールを落としてしまう。これはひとつはリズムの問題です。3ボールカスケードのリズムがまだしっかりとつかめていないのです。初心者は得てして実際のリズムより少し速くボールを投げてしまいがちです。ボールを投げるテンポをもう少しゆっくりにして見ましょう。もうひとつの原因として考えられるのがボールを投げる高さが徐々に低くなっていることです。これはボールを受けることを急ぐあまり、慌ててボールを投げてしまっている結果です。全てボールを同じ高さで投げる感覚を1個、2個の練習でつかみましょう。

◆ボールを高く投げてしまう。

上級者がやっているカスケードに比べて自分のカスケードが少しボールを高く投げているように思うことがあるかもしれません。全てのボールを同じ高さで投げている限りそれはまったく問題ありません。ただ厳密にいうと実際のカスケードとは少し違ったパターンをジャグリングしていることになります。詳しくは次の項で解説しましょう。

3ボールカスケードがどれくらいでできるようになるかは人によってまちまちですが早い人なら1日で、遅くても1、2週間も練習すればできるようになります。最初のうちは何度もボールを落としてしまって、いらいらしたり、自分には才能がないのだとあきらめてしまいたくなるかもしれません。しかしあきらめず練習を続けて見てください。何度かボールを投げていると必ず今やっていることが見えてくる瞬間があります。それは偶然かもしれません。しかしそのときの感覚を体は覚えています。ですから何度も繰り返していくと最初は偶然に起こっていたものが自然に起こせるようになってきます。このようにジャグリングの感覚というのは自然に身についていくものなのです。

うまくいかなくなったときはジャグリングの心得をもう一度読み直してみましょう。

おめでとう! 3ボールカスケードが何も考えずに自然に続けられるようになれば、もうジャグラーの仲間入りです。今度はさらに難しいトリックや、パターンに挑戦していきましょう。どうぞこの先を読み進めながらいろいろな発見を楽しんでください。心からおめでとう!これからの健闘を祈ります。

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§1-4さらに安定させるためのヒント
安定すれば歩くより簡単なこと

さて3ボールカスケードは一通りできるようになりました。しかしそれでも自分のカスケードがなにかぎこちなく感じることがあります。ここからは3ボールカスケードをさらに安定度の高いものにしていくというステップに入ります。これはこれからさまざまな技にチャレンジしていく上で大切なことです。

もちろん3ボールカスケードが完全に安定しないと次の技に進めない、というように考える必要はありません。技の練習をしていくことが逆にカスケードの安定度を高めるということもあるからです。ですからいったん技の練習に入って、何かの折に触れてこの項に戻ってきてくれても構いません。

■リラックスしよう

まず覚えておいて欲しいのは、カスケードを安定させる最大のポイントは何をおいてもリラックスすることだということです。これはカスケードだけでなくどんなパターンいついても言えることです。安定したカスケードというのは続けるのに余分な力はまったく必要ありません。最初の練習では数回投げただけで手が疲れてしまうものです。しかし次第に慣れてくるとほとんど力を入れなくてもカスケードを続けることができるようになります。ある程度カスケードができるようになったら、できる限り肩の力を抜き、最小限の体の動きでボールを投げられるようにしてみましょう。

■ボールを落としそうになったら

どんなに安定しても何回かに一度は失投をしてしまうものです。しかし失投をしてもパターンを立て直すことができれば怖いものはありません。ボールがあらぬ方向に飛んでいったときは無理やり手を伸ばしてそのボールを取りに入ってはいけません。そうすると次に投げるべきボールがさらにひどい方向に飛んでいってしまいます。そのボールが取りやすいポジションに体全体を動かします。常にカスケードの中心に体の重心をおくようにするのです。最初のうちはカスケードをしながら少しずつ前進していくことがよくありますが、それは別に悪いことではありません。それでもカスケードが安定して続いているのならむしろ好ましいことですし、慣れれば自然に治る癖です。

■無駄のないカスケードをマスターしよう

上級者のカスケードをよく観察してみましょう。まるで水が手から手へあふれ出ているかのようにボールが非常に滑らかに動いています。それに伴ってボールを投げる手も小さく円を描いて動いているところに注目してください。肩の力は抜かれており、無駄な動きはありません。これが安定したカスケードです。

それに比べて自分のカスケードが少しぎこちなく、テンポがゆっくりしているように感じるかもしれません。これにはちゃんとした理由があります。実はこのゆっくりしたカスケードは安定したカスケードとは少し違うパターンなのです。区別するためにこれをスローカスケード(SlowCascade)と呼ぶことにしましょう。初心者がカスケードを練習するとき、知らず知らずのうちにこのスローカスケードのパターンになってしまうことが多いのです。

最初に断っておきますが、このスローカスケードは決して間違ったパターンではありません。スローカスケードも両手が同じテンポで同じ高さでボールを投げているパターンだからです。またこのスローカスケードのリズムはカスケードの中にいろいろな技を入れていこうとするときに必要になります。

2つのパターンの違いを説明しておきましょう。

◇スローカスケードの動き

スローカスケードは投げる動作と取る動作が独立して交互に繰り返されます。左手がボールを投げてキャッチして、続けて右手がボールを投げてキャッチします。初心者にとってこのパターンが簡単に感じられるのは右手と左手の動きが独立しているためです。右手がボールを投げてから次に左手のボールを投げるまでの間に1拍の休憩があるので、その間にやるべきことを考える余裕が生まれます。

図解すると次のようになります。○はボールを持ったまま休憩している時間です。

右手 投−取−○−○−投−取−○−○−投−取−○−○−…
左手 ○−○ー投−取−○−○ー投−取−○−○−投−取−…

◇安定したカスケードの動き

一方安定したカスケードの動きは一方の手がボールを投げることと、反対の手がボールを取ることが同時に行われます。

右手 投−取−投−取−投−取−投−…
左手 取−投−取−投−取−投−取−…

動作は対照的で無駄な動きがありません。一方の手がボールを投げているとき、反対の手はボールをキャッチし、次にそのボールを投げるための予備動作をしています。このことにより手が交互に小さな円を描くのです。いったん慣れてしまえばもっとも自然でリラックスしてできるパターンです。

■予備動作を意識してみよう

このようなカスケードをマスターする最大の鍵は手がボールを投げる前に行う予備動作です。つまりボールを持つ手が下向きに弧を描いて動く動作のことです。1個ボールを使った練習の最後に行ったのは実はこの動作なのです。

ボールを持たずにイメージの中で3ボールカスケードの練習をしてみましょう。一方の手がボールを投げているときもう一方の手はボールを受け取って下向きの弧を描きます。ボールを投げた手は小さく上向きの弧を描いて次のボールを取りにいきます。その結果両手が交互に円を描くような動作をすることがわかりますか?

図12

その感覚がつかめたらボールを使った練習です。

2個のボールを使って“ボールの入れ替え”を練習しますが、一方の手がボールを投げるとき、もう一方の手がボールを投げる予備動作をするということを意識的に行ってみましょう。つまり一方の手が上に上がるとき、もう一方の手は下に下げるのです。手が滑らかに円を描く感覚が分かりますか?

次に3つのボールで練習します。このときボールをできる限り低くコンパクトにジャグリングしようと意識してみましょう。肩の力を抜き、リラックスして行うようにします。

不思議なことにそういう意識をもつだけで自然に動きが安定したカスケードに近づいていくものです。人間とは生まれつき左右交互にリズムにあわせて動くことに慣れているのですから、その本能に従えばいいだけなのですね。

完全にカスケードが安定すればまったくボールを落とす気がしなくなります。そうなればしめたものです。カスケードを安定させることの最大の利点は、何か難しい技を練習してボールを落としそうになったらカスケードのパターンに戻すことで再び体勢を立て直すことができるということです。

さて、3ボールカスケードの総まとめとして最後にパターンを終わる方法を説明したいと思います。

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§1-5パターンを終わる事
Q.どうしてもボールを落としてしまいます。どうすればいいのですか?
A.落とす前に終わればいいのです。

今までの練習でカスケードをスタートすること、カスケードを続けることは習得しました。しかしもうひとつ大切なことを忘れてはいけません。それはもちろんカスケードを終わることです。

あるパターンを練習するとき、同時にそのパターンを終わることを学ばなければなりません。そうでなければパターンを終わるのは常に失敗してボールを落とすときということになってしまいます。(もしくは永久にパターンを続けるかですが…)

いつもいつも失敗すること(つまりボールを床に落とすこと)によってパターンを終わることはあまり好ましいことではありません。その理由の一つはもちろん実際のパフォーマンスにおいては必ず成功によってパターンを終わらせる必要があるからです。それだけでなく成功してパターンを終えるということは練習に1つの区切りや、達成感を与えてくれるものです。

始まりがあって、真中があって、終わりがある。すべてのパターンはこの3つがそろってはじめて完結するのです。

■カスケードの終わり方

実はもっとも簡単なカスケードの終わり方はすでに練習しています。カスケードの練習の最初で3回ボールを投げてパターンを終わる練習をしました。パターンを終えるには基本的にボールを投げるのをやめ、片手にボールを集めればいいのです。右手でも左手でもボールを集められるようにしておきましょう。

効果的な練習方法としてはボールを投げる回数をあらかじめ決めておいてその回数だけボールを投げたらパターンをとめてみるのです。できればここでキメのポーズをとってみましょう。短いですがこれでも立派なひとつのショーです。

やってみると分かりますが、連続的にボールを投げている中でボールを投げるのをやめるということは案外難しいものです。慣れないうちは少ない回数を決めて、パターンをストップしてみましょう。奇数回なら投げ始めた手と反対の手、偶数回なら投げ始めた手と同じ手にボールが集まるはずです。慣れてしまえばいつでも好きなときにパターンを終わらせることができます。

■ボールを高く投げて終わる

上の方法でも構わないのですが、もっとかっこいい終わり方を練習してみましょう。多くのジャグラーがボールのフィニッシュとして用いている方法がボールを高く投げ上げてそれをキャッチして終わるというものです。見た目に印象的なだけでなく、リズムが心地よいのです。

先程の方法は

タン、タン、タン、タン、タン(ストップ)

というリズムでパターンが終わりますが、この方法では

タン、タン、タン、ターン、タン(ストップ)

というリズムで終わります。ちょうどロックミュージックの最後に音を伸ばして、ドラムが大きな音を鳴らして音楽を終わらせるような感じですね。

パターンの中でボールを高く投げるのはいっそう難しく感じます。先程と同様回数を決めておくとよいでしょう。たとえば10回目に投げるボールを高く投げてそれをキャッチしてパターンを終わってみましょう。高く投げたボールは右手か左手に集めます。取りにくいと感じたら両手でとっても構いません。

慣れてきたらボールが高く上がっている間に両手のボールを一方の手に集めて、空いた手で落ちてくるボールをキャッチしてみましょう。今左手から最後にボールを高く投げあげたとします。このボールが空中を上がっている間に右手のボールをすばやく左手に渡します。目線は手元ではなく、空中のボールを追いかけます。空になった右手で落ちてくるボールをキャッチします。ここでなにかキメのポーズをとれば大きな拍手がもらえることは間違いなしです。

図13

その他にも多くのフィニッシュがあります。ショーにおいてフィニッシュは客の拍手をもらうための重要なポイントです。いろいろな人の演技をみてどのようなフィニッシュをしているかを観察してみるといいでしょう。面白いと思うものがあったらぜひ自分の演技の中にも取り入れてみましょう。ただし大切なことはフィニッシュは絶対に失敗しないものを選ぶということです。せっかくの見せ場で失敗してしまってはもともこもありません。

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ボールジャグリング教本 第1章 ジャグリングの基本パターン
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